概要
DIAプロテオーム解析では、最新鋭の質量分析計であるtimsTOF-HT(Burker社)(
fig.1)を用いて分析深度と定量性に定評のあるData-independent acquisition (DIA)分析法でプロテオーム解析を実施いたします。エクソソーム蛋白について、発現量の多いものから最大8,000種類のタンパク質を網羅解析し、サンプル間で個々のタンパク質の量的比較を行うことが可能です。また、本サービスはエクソソーム調製からDIAプロテオーム解析までを一貫して行うワンストップサービスとなっておりますので、お客様はサンプルを送付するだけで高深度なプロテオーム解析データを手に入れることができます。
高深度プロテオーム解析を行う利点
1種類の哺乳類細胞の中には10,000~12,000種類のmRNAが発現し、タンパク質の種類も同等数存在するだろうと想像されています。その中でも生体システムの様々なパスウェイを構成するキナーゼや転写因子などのタンパク質は微量ながら、生命維持に極めて重要な働きをすることが知られています。これらのタンパク質の変動は疾患に直結し様々な疾患の創薬ターゲットやバイオマーカーとなるため、それらの蓄積量の定量解析への期待は非常に大きいものです。しかしながら、これまでの一般的なプロテオーム解析では分析深度が足らず(およそ3,000タンパク質程度前後)、細胞内の微量タンパク質を観測するには不十分な感度でした。そのため、より微量なタンパク質を捕えるためにさらなる分析深度の向上に向けた取り組みが続けられています。当受託サービスのDIAプロテオーム解析システムでは、ヒト由来の培養細胞であるHEK293細胞において8,000 以上のタンパク質を観測し(かずさDNA研究所での未公開データ)、3,000程度のタンパク質が観測される一般的なプロテオーム解析結果と比較すると、キナーゼと転写因子の観測数はともに4倍以上に増加しています(試料によって観測できるタンパク質数は異なりますのでご注意ください)。当システムでも未だすべてのタンパク質が網羅できているわけではありませんが、プロテオーム解析における分析深度の問題を大きく改善することに成功しました。こうした技術を駆使した当受託サービスをご利用頂くことで高発現量のタンパク質から今まで観測が難しかった微量タンパク質までを網羅的に解析することができます。
エクソソームは身体を構成するほぼすべての細胞から分泌され、体循環に乗って運搬されすべての体液中に存在する小胞です。直径100 nm前後の1個のエクソソーム中に封入されるタンパク質の量には限界がありますが、細胞株など均一の細胞から分泌されるエクソソームであっても、そのポピュレーションは極めて不均一であると考えられます。つまり、精製したエクソソームから検出されるタンパク質の種類は非常に多く、例えば上記のHEK293細胞の培養上清から精製したエクソソームからは4000種類以上のタンパク質が検出されたことから、それぞれ異なるタンパク質を担った様々なエクソソームが標的細胞に対して多角的なシグナルを伝えていることが想像されます。エクソソームはまた新たなバイオマーカーを有するターゲットとしても注目され、エクソソームに含まれるタンパク質の高精度な解析が求められています。血液検体を解析する場合、圧倒的多数を占める正常細胞由来のエクソソームの中から、疾患部位より分泌されたエクソソームにのみ含まれる極めて微量の標的分子を見出す必要があります。それにはより多くのタンパク質の同定とサンプル間の定量比較が可能な当受託サービスが最適な手段となります。
サービスメニュー
品番 |
メニュー |
試験内容 |
最良結果を得るための サンプル必要量 |
1サンプルあたりの 解析費用 |
納期 |
EP-1 |
サンプルからのエクソソーム調製 |
超遠心法によるエクソソーム調製 |
細胞培養上清: 無血清培地で100mL 血清・血漿:0.5mL |
細胞培養上清(EP1-A):¥140,000
血清・血漿(EP1-B):¥50,000
(エクソソームが十分取れなかった場合も同じ金額) |
都度相談 |
MS-2 |
エクソソームの次世代プロテオミクス解析 |
~8,000種類の蛋白質の同定と相対定量解析 |
蛋白量として 5µg以上 |
1~5検体の場合:¥98,000)MS2-A)
6~15検体:¥92,000(MS2-B)
16検体以上:¥90,000(MS2-C) |
4週間 |
MS-4 |
オプション:サンプルクリーンアップ処理(純水あるいはPBS以外の溶媒に懸濁されている場合) |
- |
- |
¥25,000 |
オプションを加えても納期に影響なし |
MS-5 |
オプション:繰り返し測定 (通常は1サンプルに対して1測定) |
- |
- |
1測定追加ごとに¥40,000(MS5-A) |
オプションを加えても納期に影響なし |
注意:
* サンプルのタンパク量が十分量に達してない場合はこちらからお客様に連絡し、解析中止もしくは解析続行かを選ぶことができます。
*タンパク量が少なくても解析を続行される場合は同定・定量できるタンパク質が減少することをご了承ください。
*解析中止の場合はその時点までの作業料を請求させていただきます。
サンプルの必要最低量
エクソソーム抽出を行う場合:
- 細胞培養上清:無血清培地で100mL
- 血清・血漿:0.5mL
エクソソームペレットをご送付頂く場合:
ペレットをPBSあるいは純水で懸濁し、BCAアッセイ等でタンパク定量を行ってください。
その結果、タンパク総量として5µg以上に相当するエクソソーム懸濁液をご送付ください。
(純水あるいはPBS以外の溶媒に懸濁されている場合、サンプルクリーンアップ処理の要否についてご相談ください。)
- ヒト臨床検体由来の場合、HIV, HBV, HCV 陰性であることを確認している検体のみ受け入れ可能です。未確認、あるいは陽性の検体由来のサンプルはお受けできませんのでご注意ください。
- 申込書記載のサンプル名称と、送付検体に記載されている名称は統一してください。
- ヒト由来サンプルは提供者のインフォームド・コンセントが得られていることが前提となります。
- 提供者の個人情報が特定できないようにサンプル名を匿名化して下さい。