概要
drug2drugsは、標的タンパク質の情報を用いずに、一つの活性化合物の構造情報のみから、別の骨格の活性化合物を増やすサービスです。活性化合物を増やすことで、創薬研究の成功確率を高めます。
活性化合物とは、標的タンパク質への結合力を有する化合物のことです。多様な骨格を持つ活性化合物を複数持つことが、毒性・物性・特許性などの観点で、創薬研究の成功確率向上には重要です。
富士フイルムは、一つの活性化合物を基点に別骨格の活性化合物を増やすことを目的に、AIとシミュレーションに基づく新しい骨格変換の手法であるAI-AAM
® (AI-Amino-Acid Mapping) を開発しました。AI-AAMでの骨格変換には、活性化合物の構造情報のみ必要で、標的タンパク質の情報が不要です。
この度、AI-AAMの骨格変換によって、低分子・ペプチドの活性化合物を基点に、活性化合物を増やすサービスdrug2drugsを開始致します。
サービスの特長
- 新たな医薬品候補化合物を独自AIを活用しデザインする、「探索・設計シミュレーション技術を用いた創薬支援サービス」です。
- 既存の化合物ライブラリーからの探索のみならず、従来発想できなかった新規化合物の設計も可能です。
- 膨大な時間がかかっていた新薬開発の期間短縮や、コストダウン、成功率向上に大きく貢献します。
- AI-AAMでの骨格変換には、活性化合物の構造情報のみ必要で、標的タンパク質の情報が不要です。
AI-AAMでの活性化合物の増やし方(fig.1)
AI-AAMを構成するAAM記述子と構造式生成AIについて
1. AAM (Amino-Acid Mapping) 記述子[1](
fig.2)
- シミュレーションで算出される、化合物に対するアミノ酸20種ごとの存在確率の3D分布のセット
- AAM記述子が一致していれば、異なる骨格の化合物でもアミノ酸と同じように相互作用し、タンパク質とも同じように結合するという性質がある
2. 構造式生成AI[2](
fig.3)
- 骨格は全く異なるがAAM記述子が同等な化合物構造を自動的に設計するAI
- 初期構造の設定が不要かつ原子レベルでの設計を行うため、化合物数~1060の網羅が可能
- 得られる化合物は、熱安定性の高いものに限られる
[1]特許第06826672号、[2]特許第07191969号, 特許第07190498号, 特許第07116186号
AI-AAMを低分子・ペプチドの活性化合物に適用し、骨格変換した結果
1. 低分子から低分子への骨格変換[3](
fig.4)
SYK阻害剤BIIB-057の構造式を基点に、データベースの化合物約1200万種の中から探索し、AAM記述子が最も類似した化合物としてXC608を抽出 (探索時間は約1か月)
2. ペプチドから低分子への骨格変換[4](
fig.5)
PDL1阻害剤Peptide-71の 結合配座および結合部位 *を基点に、新規構造を設計し、低分子化合物FF-ATC-001を取得 (設計時間は約1か月)
*PDL1との結合時のPeptide-71の立体構造、およびPDL1と接触しているPeptide-71の部分
[3]CBI学会2022年大会P08-14、[4]CBI学会2022年大会P08-07, Excellent Poster Awards、[5]WO 2009/136995、 [6]WO 2011/035077、[7]US20140294898 A1